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「機動戦士ガンダム」⇒「Ζガンダム」と、「アインシュタインの生涯 」(ブレヒト遺稿)は、とてもよく似ているんですね。
ざっくり説明しますと、アインシュタインは、ファシスト(独裁者)に勝利するため、偉大な公式【E = mc2】<イー・イコール・エム・シーじじょう>を、2つの勢力の一方に引き渡します。![]() 味方の勢力は勝利し、敵を打ち負かします。が、 そのとき味方だった勢力が、恐ろしい姿を現すのです。ファシズムの敵だったものたちが、ファシストになっていたのです。
ファシストであるジオン軍と戦って、地球連邦軍が勝利するお話です。「Ζガンダム」とは ところが、あるとき気がついてみると、地球連邦軍はいつの間にか、ファシスト(独裁者)に変貌していたという物語です。 独裁者に勝ったものが、新たな独裁者に・・・それが「Ζガンダム」と「アインシュタインの生涯」の共通点です。 だからシャアは「ガンダム」では敵側で「Z」では主人公側なのか・・・。
実は、「アインシュタインの生涯」は、構想途中でブレヒト逝去のため完成しませんでした。 ですから富野氏は、現実の歴史を調べてガンダムを制作されたのでしょうね。 ガンダムシリーズに登場するハマーン・カーンというキャラクターは、【限定核戦争】を肯定した実在の人物ハーマン・カーン(アメリカの軍事理論家)に由来しているのはよく知られています。 富野氏は「事実に基づいて」ガンダムの世界を構築した。だからこそガンダムは時代を超えて「リアル」なんですね。 そしてそのような状況下でも、たくましく成長している子供たちの姿を描いたのが「機動戦士ガンダムZZ」です。「ガンダムシリーズ」素晴らしいと思います。 アニメじゃない♪アニメじゃない♪ホントのことさ♪(機動戦士ガンダムZZ 主題歌) なるほど、そういう意味でしたか。
![]() ![]() この「ひっくり返し」の手法は、日本SF界の巨匠(神様)、星新一さんのお家芸といってもいいでしょう。 代表作のひとつ「おーい でてこーい」は何度もドラマ化されていますので、ご存知の方も多いでしょうね。 台風が去ったあとから、「おーい でてこーい」のお話は始まります。
そしてラストは・・・。
「これでよくなる!」と思ったら、前と同じか、さらにひどくなった・・・。 動物農場は、こんなお話です。ボクサー(馬)さん、あなたのそのたくましい筋肉の力がなくなったら、その日に人間は、あなたを屠殺屋に売りとばすでしょう。その屠殺屋は、あなたの のどをかき切り、煮詰めて、犬のエサにしてしまうのです。 人間たちにいいようにされていた農場の動物たちが、ついに反乱を起こします。反乱は成功し、人間を追放し、豚が動物たちの新しい指導者になります。 ボクサー(馬)は、新しい指導者(豚)に心酔します。「わしがもっと働けばいいのだ」「ナポレオン(指導者の豚の名前)はいつも正しい」 他人の何倍も働き、ついに働けなくなった馬ボクサーはどうなったかというと、やはり屠殺業者に売り払われ、新しい指導者(豚)たちがウィスキーを購入する代金となってしまい、指導者たちはそのウィスキーを飲んで浮かれてドンチャン騒ぎをするのです。 動物農場は、このような感じで終わります。変化したのは、何だったのだろうか? 動物たちは、人間から豚へ目を移し、もう一度、豚から人間へ目を移した。しかし、もう、どちらがどちらか、さっぱり見分けがつかなくなっていたのだった。 指導者が変わっても・・・というストーリーは、「アインシュタインの生涯」とつながる部分がありますね。 筒井康隆先生の小説「火星のツァラトゥストラ」に、こんなくだりがあります。
「動物農場」を、指導者(豚)の視点でざっくり説明すると、そういうお話になるんですね。そうならないためには、どうしたらいいんでしょうね。 筒井康隆先生の特徴は、“逆説の文学”です。もちろん筒井氏の本心も、世の中のいろんな部分にメスを入れて、「いい世の中にしたいよね、みんなで考えよう」ということにあります。そういう意味では、ブレヒトやジョージ・オーウェルと相通じるものがありますね。 コーディーリアの真意がわからずに、耳に心地いい甘言を並べたゴネリルを信じた「リア王」の二の舞は避けたいものです。 ブレヒト作「まる頭ととんがり頭」の劇中歌[水車のバラーデ]は「動物農場」とよく似ています。ご紹介します。ああ、我々は多くの君主を戴いてきた 虎やハイエナのような君主もいたし 鷲や豚のようなのもいた。 しかしましな君主でもひどい君主でも 連中を養うのはいつも我々だった。 彼らの穿く靴はどれも同じで それで我々を踏みつけた。 私の言うことが分かってくれるだろう 我々に必要なのは別の君主ではなく、 君主を持たなくなることだ。 もちろん水車は回り続ける 上にいるものは永久に上にはいない しかし下の水からみるとそれはただ 永久に水車を回す役を勤めているだけのこと。
それでは最後に、ブレヒト最後の戯曲遺稿断片、「アインシュタインの生涯」の全文を紹介して、お別れいたします。
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