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魔女は本当はいい人だった?
パロディ「ヘンゼルグレーテル」
裁判劇に役立てよう
これから紹介するのは、ドイツの子どもたちに絶大な人気を誇る、パウル・マールの作品「魔女が語る悪いヘンゼルと悪いグレーテルのお話」(1968年)です。
このパロディ版では、悪いのはヘンゼルとグレーテルであり、魔女は純真で無垢な存在です。
話の筋は、こうです。
勤勉な魔女は、「何年もずっと働き続けて、朝早くから夜遅くまで魔法を使い、毎日呪文を唱えて」いました。
だけど、年齢とともに魔法に衰えがみえてきた彼女は、毒づいたりせず、素直にこう決意します。
  • 私の魔法の力もおしまいね。他の仕事を探して、だらだらしないように、気分が落ち込まないようにしないと。
    そう、私の家をここらじゅうで一番きれいな魔女の家にしましょう!
魔女は一生懸命働いて、家をレープクーヘンやお菓子、砂糖で飾りつけ、自慢の家を完成させます。
その家をある日、子どもがふたり来てかじり始めました。子どもたちは、レープクーヘンの屋根瓦を外し、窓の砂糖でできたガラスを割り、壁を壊していきます。
出て行ってふたりを問い詰めると、お腹がすいて食べたといいます。
かわいそうに思った魔女は、ふたりを家に入れ、ごちそうしてあげます。きれいなベッドに寝かしてもやりました。

次の日、魔女が家を直そうと仕事を始めると、

ヘンゼルは出された朝食を食べずに外に出て、また家を食べ出すではありませんか。
怒った魔女は、これ以上悪さをしないようにヘンゼルを納屋に押し込みました。それでも、ヘンゼルが空腹で困らないように、食べ物を用意してやりました。
  • 「お腹はいっぱいかね?しっかり食べているのかい?指を出してごらん」
ヘンゼルはしっかり食べていましたが、欲張りだったので、もっと食べ物をもらおうと指ではなく骨を出しました。
  • 「妹が食べ物を少ししかくれないんだ。もうガリガリだよ」。老婆は骨をさわって、言いました。「本当だこと、まるでガリガリね!グレーテル、お兄さんにもっと食べ物をあげてね」。
グレーテルに料理をさせようとすると、怠け者のグレーテルは料理ができないと言います。
そこでパンを焼かせようと、オーブンを温めて、様子を見ようとした魔女は、悪賢いグレーテルにオーブンに押し込まれ、焼け死んでしまいました。
グレーテルと自由になったヘンゼルは家中をかきまわし、真珠や宝石でいっぱいの箱を見つけます。それを盗んでポケットいっぱいに詰めて、ふたりは森を出ます。

最後は、このように終わります。
  • そしてみんなは、その後でふたりが人々にどんなことを話したか知っているかな?
    ふたりが言うには、魔女がふたりを食べようとしたんだって。このずるい子どもたち!
このパロディはすごいです。
「ヘンゼルとグレーテル」を、ストーリーは同じままで、視点だけを変えて、まったく正反対の内容にひっくり返しています。
この【視点の変換】は、裁判劇などを演じるときに役立ちますね。
裁判では自分たちが有利になるよう、検察側と被告で主張がまったく変わるものね。それと、おんなじね。

いろんなものをヒントにして演技に役立てていきましょう。

参考文献
本当にあった?グリム童話「お菓子の家」発掘 メルヒェン考古学「ヘンゼルとグレーテルの真相」 現代書館