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![]() ・・・あ、やさしくしてね・・・。
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![]() アンデルセンは、もてなかった。 え・・・! ![]() ![]() 1830年の5月初めから、8月末にかけ、アンデルセンは旅をしました。 この旅でアンデルセンは初恋を体験するのです。 アンデルセンは25歳になるまで、恋愛したことはありませんでした。自分のことを考えるだけで頭がいっぱいで、他の人のことを考える余裕はなかったからです。 ![]() アンデルセンはリボアに恋心をおぼえ、彼女に婚約者のあることを知った後も、あきらめかねてせつない愛情を訴え続けました。 でも、結局リボアは、さよならを告げる一葉の手紙を残して去っていったのです。 ![]() リボアのほうでも、アンデルセンが摘んでくれた花の小さい束を、彼からささげられた詩とともに、結婚後も大切に保存していました。それはいまもオーデンセのアンデルセン博物館に陳列されています。 ![]() アンデルセンはルイーゼに逐一話して慰めを求め、ルイーゼも兄妹のように接しました。それでおのずとそれ以上の気持ちを抱くようになったのです。 しかしルイーゼにはW・リンドという青年弁護士が約束されていたので、ルイーゼからはなんの反響もなく、1833年に彼女とリンドとの婚約が発表されました。 ![]() アンデルセンはリンドに燃える思いをよせました。「よなきうぐいす」(25番)と「みにくいあひるの子」(27番)。この二つの名作はリンドにささげられたのです。 アンデルセンは彼女に毎日のように会い、幸福感と希望に満ちた気持ちになりました。 しかしリンドはその折、晩餐会の席で彼を兄と呼んで乾杯しました。それは、思いやりを込めて、彼の妻にはならないことをそれとなく言ったものと考えられます。 ![]() しかし、その年の晩秋からリンドがベルリンで出演すると聞いて彼も12月下旬、ベルリンに赴(おもむ)いたのです。 ![]() アンデルセンは、貴族や名士から厚遇されながら、リンドからはにがい幻滅を味わわされました。 アンデルセンはリンドと一緒にクリスマスイブを過ごせると思い込んで、他の招待をことわってまっていました。しかし彼女からの招待は来ませんでした。 彼はひとりホテルで星空を見上げ、これが自分のクリスマスツリーだ、と寂しく思いました。 そのやるせなさを翌日リンドにぶつけると、彼女は「あなたは王子や王女のところにいらっしゃるのだ、と思いました」と言ったのです。 こうして二人のすれ違いは明らかになりました。 結局リンドは、15歳年上の大作家アンデルセンとではなく、九つ年下のピアニストと1852年に結婚したのです。 ![]() 物理学者エアステッドの次女ソフィーに思いを寄せたものの、富と年齢が違いすぎました。 スウェーデン旅行中、パルク伯爵の次女マティルドに慕情を寄せました。35歳の彼は「たっぷりお金がありさえすれば、この年になっても恋をするのだが」と書いています。お金や身分だけでなく、年も17もかけ離れていました。 このようにアンデルセンは配偶者を求め続けましたが、その点では恵み深い神様も、よいようには計らっては下さいませんでした。 ![]() でも、生活を共にする伴侶(はんりょ)はなく、ホテルか下宿住まいで、住み続けた我が家はありませんでした。 ![]() 1870年(アンデルセンが永眠する5年前)には最後の小説「幸せもののピーア」を出しました。 貧しいが音楽の才能に恵まれたピーア少年は、歌手として人気を博し、舞台上で万雷の拍手を浴び、花束の雨をそそがれていく瞬間に、心臓発作で死んでしまいます。 アンデルセン自身、神の恵みに感謝し、栄光の中でピーアのように死にたいと願っていたのかもしれません。 ![]() ![]() ![]() なかなかやるわね。負けられませんね。 ![]() ![]() アンデルセンの童話は、めでたしで終わらない!
![]() ![]() 「しっかり者の錫(すず)の兵隊」は、最後にストーブの中にほうりこまれて溶けてしまいますし、「人魚姫」も王子さまとは結婚できなくて、海の泡となって消えていきます。 ![]() アンデルセンのお母さんは、子供のころ両親から、物ごいしてきなさいと、往来にかり出され、一日じゅう橋の下で泣いていたという思い出をアンデルセンに語って聞かせたといいます。 ![]() アンデルセンは暗い幼少年時代を送りました。17歳のころは着の身着のままの浮浪児でいじめにも遭いました。でも、それに滅入らず、明るく楽しく生きようとしました。野草のような強さには心を打たれます。 ![]() アンデルセンは美男子とはいえませんでした。「外国から来たオランウータン」などとひどいことを言われたそうです。そういう劣等感が「みにくいあひるの子」に現れているといわれています。 ![]() ![]() ![]() しかし、だからこそ「悲恋を描かせたら右に出る者はいない」と言われるほど、アンデルセンは恋愛童話の達人となりました。 ![]() 有名な「人魚姫」【1837年】や「雪だるま」【1861年】は、片思いの恋愛を描いた作品です。 ![]() 生涯、女性にもてなかったアンデルセンですが、もてない自分の人生を作品に昇華させた彼は、歴史に名を遺(のこ)す偉人となり、現在でも光り輝いているのです。
![]() 「ファウスト」はゲーテが生涯を費やした作品です。20代で取り掛かり、完成したのは死ぬ一年前、81歳の時でした。(1831年)。ゲーテを代表する作品といえます。 ![]() 悪魔と契約して魂を売り渡すかわりに地上の楽園を手に入れたという「ファウスト伝説」は、中世このかたドイツでは、いろんなかたちで語られてきました。 悪魔との契約はともかく、魔術師ファウスト博士なる人物が実在したことは事実です。 古い文書によりますと、「かつてあったなかで、もっとも完璧な錬金術師」などと称されています。ゲーテは若いころからこの伝説の人物に関心があったようです。 ゲーテはひろく流布したファウスト伝説を下敷きにして「ファウスト」を書きあげました。 ![]() ゲーテの「ファウスト」は、神と悪魔とのあいだにある人間のたゆまぬ努力と救いを描いた悲劇で、二部からなっています。 ![]() 主人公のファウストは60年間ありとあらゆる学問を底の底まで研究しましたが、なにがこの世界を奥の奥で支配しているのか、ということはとうとう分かりませんでした。 けれども、人類に全体として分け与えられているはずのものを、喜びも悲しみも悩みも、すべて我が身ひとつに受けて味わったなら、人生とは何か、ということがきっとわかる。 ![]() そこでファウストは、メフィスト(悪魔)と契約を結び、この世にいるあいだはメフィストがファウストにあごで使われますが、あの世に行ったら逆にファウストがこき使われること、この世に満足を感じた時が最後であること、を約束します。 それからファウストは薬を飲んで若返り、あらゆる快楽をむさぼりますが、心は静まらず、ファウスト最愛の女性グレートヒェンは罪を犯して捕えられ牢屋で死んでいく悲劇に見舞われます。 ![]() ファウストが愛する女性は、グレートヒェンとマルガレーテの2つの表記がありますが同一人物です。原語表記(赤部分)をみてください。 グレートヒェン【Gretchen】 マルガレーテ【Margarethe】 また、「ヘンゼルとグレーテル」の グレーテル【Gretel】という名は、マルガレーテ(「花の子」のようなグレーテ) から来ています。 第二部でメフィストは男の事業欲をかなえてやりますが、ファウストはそれにも満足しきれません。 ![]() 最後に海の干拓という、共同体に奉仕する仕事に力を尽くしているとき、ファウストは心の底から満足を感じ、瞬間に向かって「止まれ、おまえはいかにも美しいから」と叫びます。 しめたとばかり、メフィストはファウストの魂をさらっていこうとしますが、天使たちがあらわれて、「だれでもたえず努力している者は、われらが救うことができる」と語り、ファウストの不死の霊を天上へ運んでいきます。 これが第二部です。 ![]() ![]() ![]() ゲーテが活躍したのは18世紀の後半で、ドイツ文学史の上では、古典主義の時代と呼ばれています。 ![]() 「考える人間のもっとも素晴らしい幸福は、探求しうるものを探求して、探求しえないものをしずかに敬うことである」というゲーテの言葉が、人間の限界にとどまろうとするこの時代の世界観の特徴をよく示しています。 ![]() この限界をふみ越え、空想を解き放って、世界の意味を自由に思索しようとしたのが、ロマン主義です。 ロマン主義と、人間を超える次元に自由に出入りするメルヘンには、確かに通ずるところがあるといえるでしょう。 ![]() ![]() ありゃ、やられた。ファウストやりたかったのに。
![]() ![]() ブレヒトもそのひとりです。 ![]() ![]() ![]() 水売りのワンは神様たちのため、セチュアンの町で一夜の宿を求めますが、泊めようという者はひとりもいません。最後に人のよい娼婦のシェン・テがお客を断って泊めてくれます。 ![]() 神様は次の朝、出がけに大金を置いていきます。 その金でシェン・テはタバコ屋を開き、神様の言いつけに従って、たくさん善いことをしようとします。 ![]() すると、シェン・テの従兄弟と称する男シュイ・タがあらわれて、居候どもを追い出し、冷酷なやり方で店をたて直して、姿を消します。 ![]() この従兄弟は、実はシェン・テの変装です。 ![]() 「そうです、私です。シェン・テとシュイ・タ、どちらも私です。善人のままで生きろという、あなたたちの厳しいご命令が、稲妻のように私をまっぷたつに引き裂いたのです。 自分にも他人にも同時にいい子になり自分も他人も同時に救うことなんかできません。 ああ、あなた方の世界は本当にむずかしい。苦しみと絶望が多すぎます。 困っている人に手を差し伸べると、その手がもぎ取られてしまいます。 ![]() 肉を食べなければ死んでしまうときに悪人にならずに頑張れる人なんているでしょうか? 入り用な物をどこから取ってきたらいいのでしょうか。自分のなかから取り出すよりほかありません。でも、そうすれば自分が死んでしまいます。 ![]() あなた方の世界はどこかが間違っています。 どうして悪い人間がほうびをもらい、善い人間に厳しい罰が下されるのでしょうか。 私にも、堕落に慣れていい生活をしたい欲望があります!裏町育ちですからそのへんはよく心得ています。 ![]() やさしい言葉は灰のように苦いけれどそれでも、私は場末の天使になろうとしました。 施しをするのは本当に楽しかった。よろこぶ顔を見ると、天にも昇る気持ちでした。 私を罰してください、私の犯した罪は、隣人を助け、恋人を愛し、小さな息子に楽をさせるためでした。 あなたの大きなご計画から見れば、哀れな私はあまりにも小さな人間だったのです」 ![]() 「お客様、お腹立ちになりませんように。 わたしらにもわかっちゃいるんです、こいつがまっとうな結末じゃないってことは。 どうしたら解決できましょうかね? 人間が変わったらいいんですかね?それとも世の中が変わったら? きっと神様だけが変わったらね?それとも神様なんていらないのかな? みなさんご自身、この場でお考え下さるといいんですがね どうやったら、善人に終わりを全うさせてやれるかってことをね。 さ、どうか、みなさん、ご自分で結末を探してみて下さい! きっといい結末があると思います、あるはずなんです、きっと、きっと、きっと!」 ![]() ![]() ![]() ギリシア劇でも、神(デウス・エクス・マキナ)は幕切れに人間の手に余る事件を天から下りてきて解決をもたらします。 しかしセチュアンの神々は、それまで地上にいたのに、解決を求められると、「いいことを言っていたよ、善人さ、お前は。すべてはこれでいいのだ! さあ、もうわしらは帰る時だ。 わしらは憶えていよう、お前のことを シェン・テ、善人のいた星のことを さようなら、うまくやれよ!」とうやむやなことを言って、救いを求めるシェン・テを見捨てて、天に逃走してしまうのです。 ![]() 世の中はこうあってほしい、という願いを満たしてはいないけれども、そうすることによって逆に、人々の心にその願いを呼び覚まそうとする力がブレヒトの作品には込められています。 フィルムのネガのようなものといえるでしょう。明らかに今ある社会の矛盾や問題を観客に気づいてもらおう、とブレヒトは考えているわけです。なお、「叙事的演劇」とか「異化作用」というのは、こうした手法をさしています。 ブレヒト演劇 名言集【無料です】 ブレヒト叙事的・劇的演劇 対照表【無料です】 セチュアンの善人について書いたブログ【無料です】 ![]() ![]() ![]() おしまいです♪すてきな王様になってくださいね。 ![]() ![]() みんな大変なんだね。・・・ぼく善い王様になるよ。 |
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![]() そして王子さまは魔王となりました。 ![]() ダースベーダーの人生みたいですね。なかなか思い通りにいかないのが世の中なのかもしれません。
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<参考文献> グリム兄弟とアンデルセン 東京書籍 おとなになって読むアンデルセン メトロポリタンプレス 地下の国のアリス 新書館 ファウスト 角川文庫【韻文】 ファウスト 集英社文庫【散文】 もっと知りたいグリム童話 筑摩書房 本当にあった?グリム童話「お菓子の家」発掘 現代書館 ブレヒト戯曲選集 第3巻 白水社 ブレヒト戯曲全集 第5巻 未来社 肝っ玉おっ母とその子供たち ブレヒト名作集 白水社 |
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